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ルイ・ヴィトンがコンプリケーションを作る理由──ベノワ=ルイ・ヴィトン

近年、ルイ・ヴィトンは複雑時計の開発に注力しています。その監修を務めるのが、ルイ・ヴィトン家5代目当主の次男であるブノワ-ルイ・ヴィトン氏です。なぜルイ・ヴィトンは競合他社が多い複雑時計市場に参入することを決断したのでしょうか?
受け継がれるルイ・ヴィトンの“DNA”

銀座並木通り店をリニューアルしたことはご存知ですか?この店舗では、時計をメインフロアに展示しています。さらに、パリのヴァンドーム店よりも在庫数が多いんです。弊社にとって時計は主要なビジネスであることをお伝えしたかったのです。

ブノワ氏の言葉が証明するように、時計業界でもルイ・ヴィトンは飛躍的な成長を遂げています。現在、ファッションメゾンが時計市場に参入することは珍しくありませんが、短期間でラインナップを拡充し品質向上を図り、更に複雑な機能も開発しているメゾンはルイ・ヴィトン以外に類例を見出すことはできません。

特に時計業界にインパクトを与えたのは、複雑な時計で有名なファブリック・デュ・タン社を買収したことです。多くの関係者は、この買収が失敗するだろうと予想していました。小さな工房が好むクラシカルな複雑時計と老舗メゾンが共存することはできません。しかし、ルイ・ヴィトンは彼らの期待を裏切り、完成度の高い斬新な複雑時計を次々に発表しました。その秘訣は何だったのでしょうか?

「創設者のミッシェル・ナヴァスとは、何度もリアルなディスカッションを重ね、ノウハウを共有してきました。毎日です。今では新製品のアイデアが尽きることはありませんよ」

ブノワ氏の誠実な対応が、ファブリク・デュ・タンの職人たちに本気を起こさせ、ルイ・ヴィトンの複雑時計づくりが実現した。しかし、彼はただ単に複雑な時計を作るだけでなく、ルイ・ヴィトンらしさを加えることも忘れませんでした。それはバッグでも行われているパーソナライゼーションです。文字盤にイニシャルを刻むことから始まったこのサービスは、今では顧客の要望に自由自在に対応するよう進化しました。希少なエナメル文字盤すらも採用可能です

ここまでのサービスを実現するために、文字盤メーカーとムーブメントメーカーを買収しました。その結果、10年もの歳月が必要でした。しかし、私たちが大切にしているのはパーソナライゼーションです。お客様と直接会って要望を聞き、一緒にプロダクトを作り上げることで私たち自身のDNAを反映させています。つまり、トランクで行っていることを時計でも実践しているわけですね

しかし、トランクと時計ではパーソナライズすることが全く異なる。私が尋ねたところ、ブノワ氏は笑みを浮かべながら次のように言いました。

「トランクでも時計でも、同じレベルの製品やサービスを提供すること。それが私たちルイ・ヴィトンです」

つまり、ルイ・ヴィトンは時計を作ってもルイ・ヴィトンであるわけです。
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